築40年を過ぎた団地の1室のリノベーションである。壁式RC造のため間取りの変更は難しく、躯体に仕切られた4つのスペースのなかでいかに⽣活を更新するかを考えた。4つのスペースはそれぞれ、⽔回り・寝室・キッチン・リビングに当てがわれることになり、広さは⼗分でないものもあるが、与えられたスペースの中でそれぞれの諸機能を再構成していった。例えば、⽔回りはサニタリーの広さを確保できなかったため、最⼩限の洗⾯台を設けて⽞関ホールと⼀体の⽔回りにすることになった。キッチンは、1つのスペースを全てキッチンとして利⽤することにして、壁付けのキッチンと⼤きな作業台兼収納台を設けている。なお、冷蔵庫と冷凍庫もここに納められている。寝室は、収納を枕上部にコンパクトに納めている。⼦供がまだ⼩さいため1室としているが、将来的に区切れるようになっている。 このように躯体に仕切られたスペースの広さに応じて、必要諸室のあり⽅を再構成しているが、その⼿掛かりとして、⽇常的な使いやすさよりも、⽣活の要素が少ないことで得られる気持ち良さを優先したいという施主の希望を重視した。そのため現れる要素は施主とのやり取りを通して細かく整えて、お気に⼊りの家具や器や雑貨が引き⽴つ余⽩を⽤意している。またキッチンと廊下の間に⼊れた布框⼾(われわれが考案し⾃社で販売もしている布張り引⼾)には、施主が選んだ⿊いインド綿の⽣地が張られている。この⿊い建具の存在は、われわれが⽤意した⽩い余⽩の空間に緊張感を与えている。⽩い余⽩と⿊い建具の対⽐で出来ている家とも⾔えるだろう。
Credit
設計|Camp Design inc.
施工|デライトフル