花畑団地27号棟プロジェクト|Hanahata-danchi No.27 Project
花畑団地27号棟プロジェクト|Hanahata-danchi No.27 Project
建具が再編する風景

2012年に行われた「団地再生デザインコンペ」において最優秀賞を受賞し、デザイン監修者として携わったプロジェクトである。コンペでの提案を元に、これまでにない団地再生を目指しながらも、都市再生機構による通常の賃貸住宅と同等の品質を保つために、標準設計仕様を遵守する等厳しい条件下で設計が進められた。
今回対象となったのは、東京都足立区にある花畑団地の中にあるボックス型住棟(昭和41年竣工)であるが、その射程は都市再生機構が全国に保有する約76万戸の団地風景を改変することに向けられている。この一棟のための特殊解ではなく、団地というビルディングタイプに汎用可能な設計を提示しようと考えた。そのための手立てとして建具を設計の主対象とし、それ以外の部分は標準設計仕様を編集的に扱い計画している。
具体的に建具をどうしたかというと、まず既存のスチールサッシを木製サッシに取り替えた。さらにスチールサッシを撤去したままの部屋を、既存間取り3Kの一部屋分設けた。ここは半外部の部屋=ルームテラスとなり、テラスでありながら部屋のような、部屋でありながら穿たれたままの開口をもつ半外部という両義的な場所となっている。ルームテラスは各住戸異なる位置に設定され、プランにバリエーションが生まれている。それによって異なる機能の部屋が積層することになり、団地の立面に多様性を与えている。さらに階や方角の違いにより周辺環境に呼応して、それぞれ異なる性格を持つ場所が生まれている。
木製サッシを用いた理由は、これからの団地再生において共有されるマテリアルとなり、鈍色の窓から木の表情を持つ窓になることで団地風景に人間性を与えることを目指しているからである。今回用いた木製サッシは、新潟県加茂市の地場の建具屋が集まって開発したもので、耐風圧・耐水性・高断熱性等の基準をクリアした高性能な製品でありながらも、工芸的な佇まいをもつサッシである。これをアルミサッシの代わりに入れることで、団地という工業的な存在を人の手に引き寄せ、人間のための団地として現在的な価値を持つ事が出来るのではないだろうか。団地の大量供給と共に普及したアルミサッシに代わり、断熱性によりエネルギー効率を高める木製サッシを団地再生に用いることは、コストやメンテナンスなどの課題はあるが、今後より普及し 生産構造に一石を投じることができるのではないだろうかと考えている。
部分を設計の主対象として、団地が半世紀を経て育んできた素晴らしい環境を最大化し、関係性が織り込まれた風景をつくることを目指している。

Credit
デザイン監修|藤田雄介 / Camp Design inc.
実施設計|山設計工房  
施工|江州建設
所在地 東京都足立区

Award
グッドデザイン賞
住まいの環境デザインアワード 優秀
Design for Asia Award / Bronze Award
団地再生デザインコンペ 最優秀賞

Media
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